発達障害のこと知ってね

「自分で思っていなくても大声になったり、逃げ出したりしてしまう」

特別支援学級で学ぶ 金坂くん(4年)

 発達障害のあるぼくたちのことをみんなによく知ってもらいたい――。そう考えて、自身のことを説明する文章を書き続けている小学生がいます。「自分のことを説明できない友だちの分までがんばりたい」と張り切っています。

自分を説明する文章を書き続ける
説明できない子のためにもがんばる

週に1度通常授業

 「ぼくはアスペルガー症候群という障害のせいで、みなさんには小さいことでもとても大きなことに感じてしまい、自分ではしたいとは思っていなくても大きな声になってしまったり、逃げ出したりしてしまうことがあります」

 神奈川県の公立小学校に通う、金坂くん(4年)が書いた手紙です。金坂くんは障害のある子どもが在籍する特別支援学級で学んでいますが、3月から、通常学級で週に1度、算数の授業を受けるようになりました。この手紙は、クラスのみんなに、自分のことを知ってもらいたいと書きました。

字を書くのが苦手

 金坂くんは3年生までに、書字障害とアスペルガー症候群という発達障害があることが、病院の検査で分かりました。発達障害とは、子どもが成長する中で心や体の発達にばらつきが出ている状態をいいます。書字障害は、字を書くことがとても苦手というもので、金坂くんは字を書こうとすると疲れてしまいます。でも、読むのは好きで、朝小も毎日読みます。

 また、アスペルガー症候群の人は、相手の気持ちを察することや周りの状況に合わせたりする行動が苦手で、特定のものにすごく興味を示す傾向があります。金坂くんは車や大昔の生き物が大好き。図鑑を読み込んでいるので、これらについての話しぶりは、まるで大人の専門家のようです。

みんな驚かないで

  金坂くんは、見たり、聞いたり、味わったりという感覚をうまくコントロールできないところ(感覚過敏)もあります。見たいもの、聞きたいものに集中することができず、すべてのものがせまってくるように見え、すべての音が同じようにはっきりと聞こえるそうです。教室には子どもたちが何10人といるので、せまってくるような感じがして、いっしょの授業には出られませんでした。

 が、視力が落ちたこともあって、行けるようになったといいます。クラスのみんなが一人の先生から同じことを習うというのは、金坂くんにとって初めての体験で、「テーマパークのようだった」と話します。

 金坂くんには「発達障害のことを、みんなに知ってほしい」という思いがあります。2年生のときには朝小の「お話ししましょう」に投稿し、発達障害や感覚過敏についての本を出したいと原稿も書き始めました。「話すことや書くことが苦手な人が多いので、その人たちの代わりに書いてあげたかったからです」

パソコンで図に

 書字障害のため、金坂くんがしゃべったことをお母さんに書いてもらっていましたが、パソコンで自分の考えを図にまとめる方法を教わり、いまでは自分でパソコンに向かっています。書きためた原稿は、県内の発達障害児の親の集まり「おかんの会」のウェブサイトにも載せられています。「僕の感覚過敏について」という題で、見る・聞く・さわる・味わうなどの感覚を金坂くんはどう感じるかを説明するなどしています。

 「まわりが発達障害のことを知らないために、いやなことを言われ、その子や家族がつらい思いをすることがなくなって、認められるような世の中になるといいと思います」

気配り・支えが必要

 発達障害の子どもの心が健やかに育つ支援のあり方を研究している宮本信也・筑波大学教授は「まわりの子に理解してもらうのは大事なこと」と話します。生まれ持った特徴で、得意なこと、不得意なことの度合いが強すぎるために、勉強や人間関係などに問題が出ている状態を発達障害だと、宮本教授は考えています。「持って生まれた特徴そのものが障害ではなく、大人になっても何の問題もなく生活している人もいます。『障害』にならないように、まわりの人の気配りや支えが必要なのです」

 

発達障害とは?
次のような障害をまとめて「発達障害」と呼んでいます。
 ●LD(学習障害) 聞く、話す、読む、書く、計算する、などの能力のうち、特定の分野に苦手がある
 ●ADHD(注意欠陥・多動性障害) 集中力が続かなかったり、落ち着きがなかったりして、学校生活や勉強にさしさわりがある
 ●高機能自閉症・アスペルガー症候群 相手の気持ちを察することが苦手で、特定のものにこだわる傾向がある
 (文部科学省の資料から)


朝日小学生新聞 2009年6月16日付


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